近頃、何もないところでつまづいたりしませんか。
スリッパが勝手に脱げてしまったり、靴下が気づかないうちにかかとまで脱げていたということはありませんか。
歩くと下半身にしびれなどの違和感がないですか。
これらに思い当たるなら要注意です。
その症状は脊柱管狭窄症が原因かもしれません。
脊柱管狭窄症は50才以上の方の腰痛の最大原因と考えられており、現在の国内患者数は実に350万人。
みのもんたさんや水前寺清子さん、三宅裕司さんもこの病気で苦しんだ経験があります。
症状が悪化すると歩きづらくなったり、日常生活に支障をきたすようになってしまい、最悪の場合寝たきりや要介護になることもあります。
なんだか足がしびれるようになったと感じたら要注意。
あいちせぼね病院院長で整形外科医の伊藤先生が教える脊柱管狭窄症の原因と治療法を紹介します。
脊柱管狭窄症とはどんな病気か?
脊柱管とは背骨の後ろ側にある神経の通る管のことです。
管の周りの靭帯が膨らみ脊柱管の中を通る神経を圧迫することで起こります。
神経は下半身へとつながっているので下半身にしびれが起ります。
これが脊椎管狭窄症です。
どんな症状があらわれる
神経の圧迫から感覚障害があらわれ、靴下がぬげても気がつかないということが起こります。
さらに運動機能の低下にともない足首の筋力も衰え、その結果つまづきやすい、スリッパがぬげるなどの症状が起こります。
腰が痛くなるわけではないので、素人判断では腰に原因があると思いいたりません。
しかし、そのまま放置していると間欠性跛行(かんせつせいはこう)という症状になります。
間欠性跛行(かんけつせいはこう)とは
しばらく歩くと足に痛みやしべれが生じ、少し休むとまた歩けるようになる症状のことです。
なぜこのような症状が現れるのか
立ったり歩いたりする時は、背骨が軽く反るため靭帯が神経の通る脊柱管を圧迫します。
結果、徐々に痛みや痺れが悪化、やがて足を動かせなくなってしまいます。
しかし、前かがみにしゃがみこむと脊柱管と靭帯の間に空洞(隙間)ができるので圧迫が和らぎ、痛みやしびれがおさまります。
痛みやしびれがなくなることが実は問題
痛みやしびれがおさまることがじつはやっかいで、間接性跛行があっても痛みがずっと持続するわけではないので大したことはないだろうと放置する人が多くいます。
その間にもじょじょに進行していき、そのうちに100メートルも歩けないぐらい悪化させてしまいます。
そこまで悪化させてしまうと手術をしても後遺症が残ることもあります。
早めの診察と治療が大事
ある患者さんのケース
4年前に両足のしびれがひどくなり病院へ行きます。
医師に手術をすすめられましたが、手術の後遺症で歩けなくなったり寝たきりになったりしたらと不安を抱きます。
現状はしびれる以外には普通に歩けるし、仕事もやっている。
そのままどうするか悩んでいたら、いままで1キロ歩けていたのが、だんだん歩けなくなってきました。
ついにはこむら返りや足の痙攣など症状が悪化。
さすがに限界がきて手術を決意しました。
遅い決断が後遺症の原因に
手術後は再び歩けるようになりましたが、両膝から先にしびれが残ってしまい、立ち仕事ができなくなってしまいました。
その原因は放置です。
神経は圧迫が長引けば長引くほど神経に傷がついて、重症化してしまいます。
一刻も早い手術が必要です。
脊柱管狭窄症は手術でしか治らないのか
全員が全員、手術をしないといけないというものではありません。
まずはリハビリ、薬物療法、注射などの保存療法から始めます。
3ヶ月それを続けても症状が改善しない場合、手術を検討します。
手術の内容は
神経を圧迫している靭帯を切除します。
手術まえは手すりにつかまらないと歩けなかった人が術後は自力で歩けるようになります。
従来の手術
全身麻酔で背中を3〜5cm切開して行います。
この手術は患者さんへの負担が大きく、長期入院になることもありました。
PEL内視鏡手術
局所麻酔でわずか7ミリの傷口に内視鏡をいれ行う手術です。
患者さんへの負担も少なく、症状にもよりますが2泊3日ほどで退院できます。
まとめ
脊椎管狭窄症は加齢とともない少しづつできてくるものです。
症状がじわりじわりとゆっくり進行していきます。
最初は足にしびれがきます。
腰から下のしびれ、痛みは脊柱管狭窄症の初期症状です。
足がしびれる。
かかとまで靴下がぬげる。
前かがみになると痛みやしびれがおさまる。
このような症状があらわれたら、一度病院にいきましょう。
早め早めの診断が何よりも大事なことです。
注意
間欠性跛行には神経性跛行と血管性跛行の2つの種類があります。
痛みやしびれで休むとき、前かがみになったりしゃがんだりしたら痛みが治る場合は神経性跛行で脊柱管狭窄症が疑われますが、姿勢に関係なく歩くのをやめれば痛みがしびれが治るときは、血管性跛行が疑われます。
今回紹介した脊柱管狭窄症のようであれば整形外科を、血管性跛行の場合は心臓(血管)外科を受診してください。