肌の乾燥から起こるかゆみ。
これは辛いものです。
かゆみで満足に眠れない夜もしばしば。
かきむしったらいけないとわかっていながら、ついついかきむしり炎症を起こし赤くなった肌をながめ、かいたことを後悔した経験がありませんか。
乾燥肌は空気が乾燥する冬によくおこる症状でしたが、いまでは1年を通して悩まされている人が増えています。
なぜ、肌が乾燥するのか。
なぜ、肌が乾燥したらかゆくなるのか。
乾燥させないために気をつけたいことは何か。
乾燥肌の正体をしればかゆみは撃退可能です。
世界で初めてかゆみのメカニズムを解明した肌のスペシャリスト、順天堂大学医学部名誉教授大学院特任教授で付属浦安病院皮膚科の高森先生が教える肌乾燥対策を紹介します。
なぜ肌が乾燥するのか
空気が乾燥して湿度が低くなると、身体の中の水分がどんどん蒸発して肌が乾燥していきます。
とくに乾燥しやすい冬場におこりやすい症状です。
健康な肌とは
健康な肌を電子顕微鏡で観察すると、皮膚と皮膚同士がぴったりと隙間なくひっついています。
このような状態をバリア構造といいます。バリア構造が保たれた健康な肌は外部からの雑菌や異物が入りにくく、また体内の水分も蒸発しにくくなっています。
ところが肌が乾燥するとどうなるか。
乾燥肌は干からびた田んぼ
乾燥肌は細胞同士の間にヒビが入り隙間ができています。
つまりバリア構造がこわれている状態。
このヒビの隙間から異物がどんどん入り、さらに身体の中の水分がヒビを通ってどんどん蒸発していきます。
こうして、肌の表面はカラッカラに乾きヒビ割れた土と同じ状態になってしまいます。
乾燥肌になると何故かゆくなるのか
健康な肌では神経は皮膚の表面より下の方にあります。
しかし肌が乾燥し角質層などがこわれてしまうと、その神経が表面ちかくまで延びてきます。
この伸びた神経をC線維と呼びます。
C線維は皮膚に加わる刺激にとても敏感で、そのためにかゆみを感じやすくなるのです。
乾燥肌がかゆみを感じるのは何故
皮膚のバリアが壊れていることを教えてくれるサインです。
早く対処してください、バリア構造がこわれていますよ、保湿してくださいと身体が教えているんです。
保湿材を塗るなどして乾燥肌がよくなれば、C線維はまた元の場所に戻り、かゆみがおさまります。
乾燥肌になる1番の原因は?
乾燥しやすい体質というものありますが、1番の原因はお風呂で身体をゴシゴシ洗うことです。
日本人の女性は特に潔癖症の方が多いのか、肌を強く洗う傾向があります。
入浴時のゴシゴシ洗いは皮膚の最も大事な皮脂膜や角質細胞間脂質などをはがしてしまいます。
肌の潤いを保つ上で重要なのが皮膚の表面にある皮脂膜や角質層です。
この皮脂膜と角質層で正常にあることで、皮膚の水分や皮脂を保つことができ、その結果潤いのある肌を保つことでできるんです。
乾燥肌に垢すりタオルはダメ!
ものすごく汚れがとれる、ピンポン玉ぐらい垢がとれたと喜ぶ人もいますが、本来、普通に生活してお風呂に入り、身体を洗っていればそんなに汚れがたまるはずはありません。
あれは汚れではなく肌の潤いに大切は皮脂膜や角質層がとれたものなんです。
ナイロンタオルでゴシゴシ洗うのは皮膚表面の大切なものをたくさんこすり落としてしまう可能性が高いので注意してください。
乾燥肌はどうやって身体を洗うのがいい?
タオルは使わず、手で軽く洗い流す程度です。
肌の乾燥を防ぎ、かゆみを停めるには手に直接石鹸をつけ軽く洗うのがコツです。
石鹸を使って洗うのは週に2〜3回ぐらいで十分です。
ただし、注意点があります。
頭や顔など外気に触れる部分や脇の下や足、局部など汚れが溜まりやすい箇所は毎日石鹸洗いをしてください。
乾燥肌とお風呂の温度の関係
お風呂の温度は水分量と皮脂量に影響があるか。
そこで実験。
お風呂に入る前に、腕の水分量と皮脂量を測定。
まず43℃の熱めのお湯に15分間つかる。
その後30分間、部屋で休憩。
再度、お肌の状態を計測
それぞれの数値はどうなったか。
入浴前の水分量31、7%、皮脂量14、2%。
入浴後は水分量28、9%、皮脂量13、0%。
入浴前よりも水分量、皮脂量ともに減少しています。
38℃のお風呂に15分間入浴
その後同じように部屋で30分間休憩。
計測の結果、水分量、皮脂量ともにまったく減少していないという結果に。
このことからあまり熱いお湯は皮脂膜を溶かし、入浴後の乾燥を招く可能性が高いことがわかります。
先生いわく、入浴後すぐに保湿材を塗るのがおすすめです。
皮脂があるかどうかお風呂でチェック
お風呂に入ったときに肌の表面に水滴がつきますか。
丁度、ワックスがよく効いた車のボディに降り注いだ雨が細かい水滴になるように、あなたの肌はお湯を弾きますか。
肌の水滴ができなくなるのは皮脂膜がなくなっていることを示しています。
肌の乾燥とかゆみの対処法は
まず全身に保湿クリームをこまめに塗ることが重要です。
背中など手が届かない部分にはそのための器具も販売されているので、それらを利用するのも1つの方法です。
保湿材はお風呂上がりにすぐつけることがポイントです。
効果的な保湿材のつけ方は?
皮膚の線維に沿って塗ることです。
皮膚の線維といっても、目で見ることはできません。
参考までに、腕だったら肘から手先に向かって塗る。
上腕なら外側から内側、内側から外側にむかって横に塗る。
膝周りも横に塗る。
唇は縦に塗りましょう。
とりあえず、縦横万遍なくしっかり塗るように心掛ければ十分です。
乾燥肌のかゆみが我慢できないときにはどうしたらいい
てっとり早いのは冷やすことです。
冷やすと神経の伝達速度が遅くなり、それによって一時的にかゆみを抑えることができます。
つづけて忘れずに軟膏や保湿材を塗るようにしてください。
乾燥肌のかゆみと静電気の関係は?
肌が静電気を帯びているとC線維を刺激し、かゆみを悪化させます。
とくに冬場は静電気に要注意です。
では、静電気をためないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
ゴム製の履物はさける
ゴム製のサンダルや靴を履いていると電気の逃げ場がないため身体に静電気が溜まりやすくなります。
ゴムのスリッパなどを履いていなければ、静電気が床や地面に逃げるためドアノブとかに触れてもバチッときません。
だから、肌がかゆくなる人はゴム底の履きものを避けて、底が皮など天然素材の履物にしてください。
肌着の素材に注意
綿素材の肌着がオススメです。
化学線維は静電気をつくりやすい素材です。
乾燥肌に改善を考えるなら、アクリルやナイロン、ポリエステルなど化学線維の肌着はなるべく着ないようにしましょう。
素材の組み合わせにもポイントがある
皮膚を中心に素材を並べてみます。
毛皮
ウール
ナイロン
絹
木綿
麻
皮膚
アセテート
ビニロン
ポリエステル
アクリル
ポリエチレン
塩化ビニール
このかなで、ウールと綿とウールとアクリルではどちらが静電気が起こりやすいと思いますか。
ウールとアクリルの方が静電気が起こりやすいんです。
素材同士が離れているほど静電気が起こりやすくなります。
ちなみにウールと隣同士のナイロンの服をこすりあわせても静電気はほとんど起きません。
服の素材や組み合わせに気をつければ静電気をためこまないので、結果かゆみを抑えることにつながります。
かゆみが増す意外な食べ物とは?
ココア・チョコレート・コーヒー・ほうれん草などです。
これらの食べ物にはヒスタミンというかゆみ物質が含まれています。
よって、こういう食べ物をたくさん摂るとかゆみが増してくることが考えられます。
全く食べたらだめということではなく食べ過ぎに注意してください。
適度な量を食べることが大切です。
肌を乾燥させる原因として他に考えられるのは?
ストレスです。
ストレスは皮膚の新陳代謝を低下させ肌を乾燥させます。
そして睡眠不足
睡眠不足は肌の乾燥が顕著にあらわれます。
これらのことに気をつけていながら、いつまでもかゆみが止まらない場合は別の原因が考えられます。
かゆみが止まらないのは重篤な疾患の恐れが!
内臓が病気になっている可能性があります。
肝硬変・腎炎・腎不全などでもかゆみがでます。
他にも、内臓系のガン・悪性リンパ腫・HIVなどでも肌のかゆみを感じます。
かゆみはそういう内臓の異常を教えてくれるサインでもあるんです。
注意を呼びかけているので、いつまでもかゆみがおさまらないというときには症状を軽くみないでちゃんと検査をしましょう。
まとめ
乾燥肌を年齢や体質のせいなどとあきらめないでください。
正常とされる肌の基準値は、水分量30%、皮脂量18%以上ですが、年齢58才で基準値以上の潤い肌を保っている人女性もいます。
この女性は入浴時の身体の洗い方、保湿クリームをしっかり塗る、木綿の肌着着用など、乾燥肌にならないように普段から気をつけています。
・あまり熱いお湯は避ける
・垢すりタオルや化学繊維の身体洗いタオルでゴシゴシ洗わない。
・手に石鹸を取り、やさしく洗う。
・汚れがつきやすい場所以外を石鹸であらうのは週に2〜3回で十分。
・入浴後は保湿クリームを塗る。
・静電気をためにくい履物や肌着を着用する。
・チョコレートやココア、コーヒーなどかゆみを増長させる食べものを食べ過
ぎない
・ストレスをためない
・十分な睡眠をとる
あなたが乾燥肌でかゆみに悩まされているのなら、一度これらのことを試してみてください。
また、自分の乾燥肌の状態がどれくらいか知りたければ皮膚科で検査してもらいましょう。
肌の状態を診断するスキンアナライザーという検査機がありますから、詳しく知ることができます。
いつまでもかゆみが治らないというときには用心のため、内臓の検査をしてもらうことが大事なことです。