お子さんが公園や保育園、幼稚園の砂場の砂を口に入れたりしていませんか。
そのような行動を見ると、我が子になにか精神的な問題があるのではと、心配になるかもしれません。
砂を口にする原因として、ストレスなどによる精神疾患が考えられてもいますが、多くの場合、それは鉄分不足によるものです。
「鉄欠乏性貧血」という症状で、体内の鉄分が不足すると普段は口にしない土や砂などを食べようとします。
以前、放送されて「健康カプセル!ゲンキの時間」という番組で「異食症」を特集したときに出演されていた順天堂大学医学部の奈良先生によると、幼児期の子供によく見られ、典型的なものでは砂場へ行って砂を食べたり、釘をかじったりするということです。
子供が鉄分不足になると、何故そのような行動をするのかはまだ詳しいことは明らかになっていません。
1つの説として、不足している鉄分を補おうとして無意識に砂や土を口に入れているのではと考えられています。
小学校の理科の実験でやりませんでしたか。
砂と磁石の実験。
砂に磁石を近づけると、砂鉄が磁石にひっついてきましたよね。
実験でもわかるように、砂や土には鉄が含まれています。
土には鉄だけでなくマグネシウムやカリウムなどが含まれており、極端な話、土を食べることで身体に必要なミネラルを補うのも不可能ではありません。
それを裏付ける事実として、人は長い歴史の中で土を食べていたんです。
古代人や先住民は、土を食べると身体の中の毒素を排出できるだけでなく、痛みを和らげ、傷の炎症を抑えることを経験的に知っていました。
土を薬の代わりに利用したんですね。
現代でも、南米には粘土に蜂蜜を砂糖を混ぜたものをデザート代わりに食べる人たちがいます。
インドやアフリカ、ニューギニアにも土を食べる人々がいます。
前述した「健康カプセル!ゲンキの時間」にゲストで出演していた女優でタレントの滝裕加里さんも自分も小学生の時に土を食べていたことを告白しています。
友達に「今日も土を食べているね」とよく言われていたことを覚えていると言っていました。
自分では土を食べる事がそんなにおかしいこととは思っていなかったようです。
人間だけではなく、動物にもおなじ傾向が見られ、テレビ番組で象の群れが、ある洞窟の土を食べにくる様子を紹介していました(番組名は忘れました)。
日本においても、鹿が鉄パイプを歯で削りながら舐める行動や、線路内に入り鉄製のレールを舐めるような行為が見られます。(鉄道環境におけるホンシュウジカの行動調査と衝撃件数低減に向けた対策事例ー行動調査編ー「野生生物と交通」研究発表会講演論文集13:13−20、2014)
また、ミツバチが鉄分を多く含む温泉水を摂る様子などが確認されています。
これらも鹿やミツバチが不足しがちな鉄分を補おうする行動だと考えられています。
だとすれば、鉄分が不足している子どもが砂を口にいれるのは、自然の摂理で、思うほど変な行動ではないとも言えますが、だからといって都会や町中の砂を食べていいものではありません。
昔の人々も、そのあたりの土を適当に口に入れていたわけではなく、決まった場所の決まった土を食べていたでしょう。
公園や幼稚園の砂場には野良猫の糞などが混じっていたりすることが多いので、鉄分どころか、様々な雑菌が口から侵入し、それが原因で病気になる恐れがあります。
あなたのお子さんにそういう行動が見られるなら、まずは鉄分を多く含んだ食べ物をたくさん食べさせてあげることをおすすめします。
乳幼児に成長に鉄分はとても重要な役割を担っています。
とくに脳の発育には欠かすことができないものなんです。
鉄分の働きとは?
鉄分と聞くと、貧血予防など血液不足を補うために必要なものだと理解されていると思います。
いわゆる血液にとって鉄分は必要なものという認識。
では、なぜ血液にとって鉄分が必要なのか、鉄分が不足すると身体にどういう悪影響があるのでしょう。
血液に含まれる赤血球の中には、ヘモグロビンというものが含まれています。
ヘモグロビンは呼吸で取り入れた酸素を、血管内を通って全身の細胞へと運び、また細胞が酸素を消費することで発生する二酸化炭素を肺へ運び、身体の外へ押し出すということをおこなっています。
ヘモグロビンは人が生きて行く上で、とても重要な役割を担っているものです。
このヘモグロビンは鉄とたんぱく質が合成することで生まれます。
つまり体内の鉄分が不足するとヘモグロビンも減少するということです。
それは必要量の酸素が全身に行き渡らなくなるというとても深刻な事態を意味します。
実際に血液中の酸素量が不足すると、身体のだるさや息切れ、めまい、集中力や持久力の不足などの症状があらわれてきます。
人として正常な思考や行動ができなくなるということです。
特に幼児や子どもにとって、血液中の酸素不足は健全な発育の大きな妨げになってしまいます。
鉄分は子どもの成長に欠かせないモノ
赤ちゃんは1歳になるまでに、体重が生まれたときの3倍になります。
脳もどんどん大きくなり、2歳でオトナの脳の約80%ちかくまで成長するということです。
さらに小学校に上がる6歳ごろまでには、脳の神経回路を90%が出来上がると言われています。
このような脳の急激な成長に欠かせないのが酸素。
脳はもっとも酸素を消費します。
つまり、この成長期に酸素不足なると脳の成長を妨げることになってしまうということです。
成長期の子供の脳はあらゆることを学習しようとフル回転で働いています。
酸素の供給不足は、その活動を阻害してしまいます。
そうならないためには、血管を通って脳へ酸素を送るヘモグロビンの量を減らさないようにすることが重要です。
それにはヘモグロビンの生成に必要な鉄分を十分に体内に取り入れることが必要になります。
このように幼児や子供の成長に必要不可欠な鉄分ですが、残念ながら体内でつくることができません。
鉄分は、食事で摂る以外に方法はないんです。
だから、鉄分不足にならないためには、毎日の食事で何を食べるかがとても重要になります。
子供に食べさせてほしい鉄分を多く含む食物は?
鉄分を多く含む野菜
小松菜やパセリがおすすめです。
鉄分といえばほうれん草を思い浮かべるかもしれませんが、ほうれん草には鉄分の吸収を妨げるシュウ酸という成分も多く含まれています。
なので鉄分だけを効率的に摂ることを優先するなら小松菜やパセリがオススメです。
しかし、野菜だけで鉄分と摂ろうとすると相当な量になりますから、動物性食物と一緒に調理すれば、一度の食事でより多くの鉄分を摂取することができます。
鉄分を多く含む動物性食物
豚レバーや鳥のレバー、またはレバーペーストなどにもっとも多く鉄分を含んでいます。
魚ならマグロやカツオがおすすめです。
アサリや豆腐、ひじきも鉄分をたくさん入っています。
鉄分の吸収にはビタミンCが効果的
またビタミンCは鉄分の吸収を良くする働きがあります。
食事の時にビタミンCを多く含む果物を食べさせたり、グレープフルーツジュース、オレンジジュースなどを一緒に飲むとより効果的に鉄分を摂り入れることができます。
鉄分の効率的な摂り方についてはこちらを参照してください。
鉄分の摂りすぎに注意!
鉄分の摂りすぎはよくありません。
鉄欠乏性貧血を治すため、一時的に多量の鉄分を摂るのはいいのですが、長い期間にわたって過剰に鉄分を摂り続けることはやめてください。
嘔吐、吐血、腹痛、下痢などの症状があらわれ、悪化すると肝硬変や脂肪肝などを引き起こす可能性があります。
鉄分の適正摂取量はこちらのサイトを参考にしてください。
鉄分を取りやすい食事は?
ポイントはお米中心の食事にすることです。
米を主食にすると、自然に鉄分を多く含んだおかずになります。
マグロなど赤身さなかの刺身や焼き鮭にアサリやシジミの味噌汁、豚汁やけんちん汁などなど。
また納豆やほうれん草のおひたしなどもあわせていだたくことができるので、鉄分をバランス良く摂ることができます。
まとめ
体内の鉄分が不足すると、酸素を全身に送る働きをするヘモグロビンが減少し、必要十分な量の酸素が行き渡らなくなり脳を初めとして身体全体に悪い影響が出てしまいます。
子どもが砂を口に入れるのは、無意識に不足した鉄分を補おうとしていると考えられます。
砂や土を口に含むという普通に考えるとおかしな行動も、足りなくなっているっている鉄分を身体が補おうとしていると考えればなるほどとうなずけるのではないでしょうか。
そもそも幼児は好奇心からなんでも口に入れてしまう傾向があります。だから時には砂や土を入れてしまうことはあるでしょう。でも頻繁にするようであるならば鉄分不足を疑ってください。
まずは毎日の食事を見直し、肉や魚、野菜をバランスよく組み合わせた食事を食べさせてあげてください。
それプラスにサプリメントを利用することも一つの手段です。
鉄分が十分に身体に取り入れられていれば、自然と砂や土を口に含むこともなくなります。
しばらくそれで様子をみて改善しないようなら、一度病院で診断を受けるようにしてください。
原因が別にあるのかもしれませんから。